『毒殺日記』『少年は残酷な弓を射る』

ベンジャミン・ロス監督『毒殺日記』(1994)


幼いころには、本作を観た母が興奮気味にラストシーンを語っていたので、観ていないのに脳内で再現映像が出来ていた映画。
ちなみに『八仙飯店之人肉饅頭』も同様。
今回はじめて本編を観た。
出来事は脳内再現映像の通りだったが、思いのほかポップな語り口で驚いた。
犯罪実話をブラックコメディにするセンスって日本映画にはあまりない。
タリウムとの再会は、事実通りだが、「物語が動き出してしまう」ってこういうことだなと実感。


リン・ラムジー監督『少年は残酷な弓を射る』(2012)


無差別大量殺人を行った少年を持つ母の物語。
事件後の現在と、少年の幼少期が交差して描かれる
少年は幼いころから母には懐かず、当てつけのように問題行動を起こす。母を追い詰めることが人生の目的のようにさえ感じる。母はどう向き合ってよいのか困惑する。
育児の難しさについて、カリカチュアした形で問うているように感じる。
母の視点で物語が進行するので、少年の内面が理解できない。子どもの内面の分からなさは多くの親が理解する悩みだろう。あるいは分かっていたつもりが、子どもの言動によって全然分かっていなかったことを痛感させられることはあるだろう。
子どもの内面の分からなさについて、子ども自身だって分からないと本作は明示している。それを踏まえたうえで、母子が対峙する場面を用意している。
信頼できる作品だと思いました。
母を演じるティルダ・スウィントンの芝居からはヒリヒリ感が伝わるが、画面の切り取り方や劇伴は人物を突き放して、皮肉を込めた演出を施している。このバランス感覚。


少年は残酷な弓を射る』も『毒殺日記』もイギリス映画。