『ブリトニー対スピアーズ -後見人裁判の行方-』『真夜中のミサ』E1

エリン・リー・カー監督『ブリトニー対スピアーズ -後見人裁判の行方-』(2021)

「お騒がせセレブ」というぼんやりとしたイメージを抱くだけで、詳しく知らなかったが、あまりにグロテスクな状況に置かれていることを知り、驚いた。

劇中で言及されるように、ブリトニーを支配する父の関係性は「家父長制」を象徴している。

発言権さえも奪われたブリトニーは、信頼するスタッフに手紙を託し、代読を依頼する。そのスタッフはクビになる。

ブリトニーは後見人を交代を求めるが、後見人が手配したSPに見張られて発信することが出来ない。そこで支援者とトイレでこっそり会って、後見人交代を求める書類に署名する。劇映画のような状況。その書類は却下されてしまう。

発言が禁じられているので、ブリトニーが発言する映像はない。しかし終盤に裁判で発せられたブリトニーの肉声が流れる。彼女の活躍映像と共に。肉声を聞くだけで、カタルシスを得てしまうのだから、相当に酷い状況に置かれていると言える。

まだ解決はしていない。

ブリトニーと争う父親が弁護士が雇う費用もブリトニーが支払う。無茶苦茶。

丸坊主等のセンセーショナルな映像・画像は敢えて使っていない。ブリトニーに対する敬意やセンセーショナリズムへの批判が伝わるスタンス。

 

マイク・フラナガン監督『真夜中のミサ』第1話

マイク・フラナガン監督によるリミテッド・シリーズ。

留置場で男が横になる。カメラが90度回転する。切り返すと、幽霊が映る。男が交通事故によって殺してしまった相手。幽霊の顔にはガラスの破片が付着しておる。そこが赤と青に明滅する。事故現場に集まったパトカーのランプである。この冒頭のショットで一気に引き込まれた。

キャラクター紹介に費やされるが、何か起きそうな不吉な予感に満ちている。巨大な箱。嵐が来る前の夕焼け。本土にいるはずの神父が嵐の中を走り、翌朝海辺には大量の猫の死骸。

実景がどれもよかった。グレーディングを緻密に仕上げているのが分かる。