『ペイン&ゲイン』

マイケル・ベイ監督『ペイン&ゲイン』(2013)

 日本未公開。ようやくDVDがでた。
 猛烈に面白い。実在の犯罪者の軽薄さとマイケル・ベイ演出の軽薄さが奇跡的に合致した名作。
 『ファーゴ』を『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』のノリで撮ったハイテンションなブラック・コメディって感じ。
 犯罪者たちは3バカトリオで、言動がアホ過ぎて最高。事故死を偽装する際には、わざわざシートベルトをつけさせ、失敗してしまう。行き当りばったりの犯行のすえ行き詰まると、「こうなったら…出たとこ勝負だ!」と宣言する。死体解体をしようとして購入したチェーンソーが国産でないため上手に切り刻めないと、店にクレームをつけに行ってしまう。アホさが底抜けで、逆に「そんな発想あったか」と感心してしまう。しかも実話。室内で肉片を焼いていると、臭すぎて路上で焼き始める場面では、「これでもまだ実話」と字幕が挿入される。
 マッチョマンに手術着や裸エプロンを着させたり、子犬にちぎれた親指を加えさせたり、毒気と遊び心が同居したビジュアルがいい。爆発を背後に歩くマッチョマン3人組をクールに撮っておいて、実は爆死させたはずの男が生きていたとズッコケ感を強調するのも面白い。スタンガンの威力を示すのに、ヨダレをスローモーションで撮る感性にはひれ伏すしかない。撮影現場で「こりゃケッサクだ」と笑うマイケル・ベイ
 30台のカメラが常備され、撮影が行われた。あるシーンは、フィルムカメラ・レッド・5D・ゴープロ等14台5フォーマットで撮られている。メイキングを観ると、マイケル・ベイは「ここはレッド」「ここは5D」「これは1000フレームで」と細かく指示を出している。「カット数が無駄に多い」と批判されることが多いが、過剰な視点が生む奇妙なリズム感が僕は好きだ。