スラムダンス映画祭2010:レポート

「牛乳王子:Prince of Milk」が上映されたスラムダンス映画祭に行ってきました。



仕事の都合上、全日参加できないし、観られるとしても1回だけなので(映画祭期間2回上映される)、行こうかどうしようか悩んだが、いろんな方からの行くべきだという後押しを受けて、行くことを決断しました。


開催地はパークシティ。シアトル空港で乗り継いで、ソルトレイクシティ空港まで約12時間。
隣に座ったインドネシア人が親切な方だった。「水、頼まなくていい?」「ゴミ捨てようか」と気を配ってくれた。
入国審査で到着日の翌日には帰国することを伝えると怪しまれた。「ホワイ?!」と。必死に「ジョブ!ジャパン!」と説明。


忙しくてここ一ヶ月近く映画舘にいけていないが、機内で新作を観れた。
4月に日本公開される「ディストリクト9(邦題:第9地区)」は最高だった。噂に聞いていたロボット対最新軍事兵器のバトルに大興奮。「ザ・フライ」的な肉体崩壊にも興奮した。
パラノーマル・アクティビティ」は映画秘宝で三宅隆太さんが指摘しているとおり「どうかと思うくらい怖くない」。前売り券買ったのに観れなかった
「パブリックエネミーズ」はジョニー・デップの反逆者魂を受け継いだヒロインの眼にうっとり。


空港はシャトルバスで1時間南下。バスといっても8人乗りの大型車。35ドルでパークシティ周辺まで運んでくれる。タクシーみたいに指定した場所に降ろしてくれるし、迎えに来てくれる。


中学英語さえうろ覚えなので、空港の乗り継ぎやバス乗車なんてできるかしらと怯えていたが、なんとかなった。


パークシティは雪国。手袋を忘れたことを激しく後悔。
スキーヤーと映画関係者しかいない街。


「アイ・アム・ディレクター・オブ“プリンス・オブ・ミルク”」と受付でオレの英語力を最大限に駆使して自己紹介。監督用の名札プレートを受け取る。副賞?としてチョコバーやいい匂いのする石鹸を頂く。
「Prince of Milk」の上映は夜なので、他の出品作を鑑賞。監督はただで観られる。


「Cease & Desist」
ナイキのパクリ疑惑を追及したドキュメンタリー。ユーモラスな語り口らしく、観客はケラケラ笑う。反応がいい。


「Cabdyman」
ゼリーって美味しいよねっていうドキュメンタリー。
「オサマ・ビンラディンも喰ったらマジうめぇーっていうに決まってる」発言は笑った。作品の関係者がサクラで笑い、盛り上げていた。


周辺を散策。気をつけて歩かないと滑って転びそうなくらい地面は凍っている。
歩いてすぐにサンダンス映画祭の会場を発見。相当近い。スラムダンスはサンダンスのアンチとして生まれた映画祭。同じ期間同じ地で催されているとは聞いていたが、こんなに近いとは吃驚。


会場内にあるレストランでサラダ・パスタ・ビール。ビール、旨かった。


「THE Wild Hunt」
中世のコスプレごっこしているおっさんおばさんの映画。ウケがよく、笑い声が幾度もあがる。疑似的に行われていた闘いが終盤で現実化する。凄惨な暴力。暴力が起こるたびに「わぉ・・・」「おぅ・・・」と声がもれる。反応がいい。



「牛乳王子:Prince of Milk」が上映される短篇部門「Twilight Shorts」。
主催者のPaul Sbrizziに挨拶。おおらかな雰囲気をもった方。「牛乳王子:Prince of Milk」はPaul Sbrizziが気に入ってくれたらしい。
上映後にコメントをするので通訳を担当するマイク・ポッターを紹介してくた。以前日本に住んでいたそうだ。日本語を話すのは6年ぶりで緊張されていた。
「Twilight Shorts」で上映された作品はホラー・サスペンス色の濃い作品だった。


「Spunkbubble」(イギリス)という短篇が素晴らしかった。
ホテルの一室が映された監視カメラ映像で構成されてる。映像を視ている者の声がオフで聞こえる。監視者が監視カメラのアングルを切り替えることで「編集」が成立する。観客は監視者と共犯関係になる。
室内で男がアダルトビデオを鑑賞しながら、一人エッチをしていると、小柄な男とバッドを持った大男が乱入し、不条理な暴力が起きる。のび太がしずかちゃんの裸を想像していたら、スネ夫ジャイアンが突然現れて、ボコられるって感じ。暴力が吹き荒れ、去ったあと、唐突に「人間ならざるもの」が出現する「飛躍」にぐっときた。
暴力に生々しさがあり、「覗き」ならではのいかがわしさがあり、生理的嫌悪感が画面に充満している。


「Culbra」(アメリカ)は変種の吸血鬼映画。サスペンスを醸成する技術力は高い。
「Danse Macbre」(カナダ)は死体フェチ映画。
「Love and Volts」(カナダ)は電気で豚を屠殺している男と動物好きの女の恋愛映画。電気ショック道具を川に捨てたら、魚が全部死ぬシーンが良かった。
「Skinned」(イギリス)ハイテンションで喋り捲っていて、気がついたらセックスしている男女の映画。
「Sleep Now」(フランス)はカップルが突如拉致される映画。



さて、「牛乳王子:Prince of Milk」上映。
観客は映画関係者なので、いつになく緊張した。
他の作品も同様だが、日本人観客より反応がいい。声を出して笑ってくれる。飛び蹴りは世界共通らしい。牛乳王子と保健の先生の飛び蹴り、どちらも笑っていた。串刺しも喜んでいた。いちばんウケたのは「100年後」だった(笑)
冒頭の「ブルマで一人エッチ」は伝わりづらかったように思う。あそこは画面上も分かりにくいし、「ブルマで一人エッチ」って文化がアメリカにはなさそうだし。
上映環境はこれまでで最高だった。HDcamにアップコンバートしたので、画面が超綺麗。オレでさえ、このシーンってこんなに綺麗だったのか。と驚いたくらい。音も良かった。ライヴ感バキバキっす。


上映後は観客からの質疑応答。
■この映画をつくった経緯は?
「私は幼いときに「チャイルド・プレイ」「エルム街の悪夢」を母に薦められて観て、大好きになりました。自分なりの80年代的なスラッシャー映画を撮りたかったのです。」
■どうしてミュージカルになるの?
ミュージカル映画で突然歌いだすのは当たり前です。ですがミュージカル以外の映画で突然歌いだせば、驚きがあります。だからです。
■制作期間は?
制作期間は3ヶ月くらいです。撮影は5日間です。
■今後のプロジェクトは?
「先生を流産させる会」という映画を撮る予定です。日本で実際に起こった事件を基にした作品です。
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上映が終わると、「FUN!」「GOOD!」といって話しかけてくれた観客もいらっしゃった。嬉しくて、こっちから握手してもらった。





さて、上映が終わったのは0:30。早朝5:45にシャトルバスが迎えにくるので、それまで時間を潰したいとポールとマイクに相談。
時間までマイクは遊び相手になってくれることになった。翌日も仕事があるのにありがたい。いい人。
サンダンス映画祭のパーティーに行くことになる。アンチ・サンダンスなのにサンダンスのパーティー行っていいのだろうか。パーティー会場は人が多くて正面からは入れなかった。
裏に回って、マイクがサンダンス映画祭のスタッフをやっている知り合いにドアを開けてもらって、こっそり入る。
酒を飲みながら、マイクとだべる。マイクはモルモン教徒なので飲めない。スラムダンス映画祭で上映された「バス男」の監督もモルモン教徒だったよね、と返す。気がつくと宗教観について話し合っていた。

パーティー会場を抜けて、バーガーキングに行く。バーガーキング、日本に再上陸したよとマイクに教える。

4:00ごろマイクと別れる。時間までスラムダンス映画祭の会場でバスを待つ。

おそらくはパーティーで朝まで飲んだ連中と共に、バスで空港へ行く。

空港で品名に惹かれて「ブレックファスト・ピザ」を食べる。アメリカ人は朝からピザを食べるのか。
DVDショップで「ハロウィン?」を買う。早速観たけど、残念な仕上がりだった。

機内で「(500)日のサマー」「ファニー・ピープル」鑑賞。
「(500)日のサマー」は恋愛を語るのが好きそうな人が好きになりそうな映画。だからオレはどーでもよく感じた。オシャレを気取っているだけのダサい映画。
「ファニー・ピープル」は「40歳の童貞男」「無ケーカクの命中男 ノックトアップ」のジャド・アパトー監督の新作。日本ではアメリカの傑作コメディが不遇に扱われているので擁護したいが、やや不満が残った。アダム・サンドラーセス・ローゲンのパフォーマンスは愉快で、2時間半は飽きなかったが、ダメ男に優し過ぎると思う。
ジャド・アパトーが制作した「寝取られ男のラブ♂バカンス」はゼロ年代のラブコメを代表する傑作。


帰国。実質二晩徹夜した。

愉しかったー。