2001年以降、私を揺るがしたこの一本:童貞。をプロデュース(2007)

ショートピース!仙台短編映画祭2009の映画祭ナビ本に掲載して頂いた原稿。「2001年以降、私を揺るがしたこの一本」というお題。出品した作品「牛乳王子」になぞらえ、童貞の恋愛を描いた松江哲明さんの「童貞。プロデュース」を挙げた。選考で「牛乳王子」を推してくれたスタッフの赤坂さんは「これ、きたかぁー!」と思ったらしい。



童貞。をプロデュース(2007)

近年アメリカでは女性向けの恋愛映画が不振で、男性向けの恋愛映画――「バス男」「40歳の童貞男」「スーパーバッド 童貞ウォーズ」「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」「寝取られ男のラブ♂バカンス」――が当たっています。「主人公がオタクで、ブサイク」「ヒロインが可愛い」「イケメンが不幸になる」「下ネタが多い」といった点が共通した特徴です。一見するとバカバカしいコメディですが、ボンクラ男子の恋愛を誠実に描いています。
日本ではヤンキー映画が流行っていますが、ヤンキーが学校ではしゃいでいたとき、ヤンキーを恐れ、ヤンキーの可愛い彼女に憧れ、教室の隅でひっそりと棲息していたボンクラ男子たちこそ映画を求めていると思います。
ドキュメンタリー映画童貞。をプロデュース」は数少ない「ボンクラ男子のための日本製恋愛映画」です。普段はAVのお世話になりながら、AV女優を軽蔑している童貞が登場します。監督は童貞をAVの現場につれていきます。偏見をなくすためにです。しかしAV女優を目の前にして童貞は逃げ出してしまい、そこで「AV女優は汚い」と発言します。すると画面外にいた監督(元童貞)が童貞の頬をひっぱたきます。笑い泣きしてしまう感動的なショットです。
「一生セックスできないのではないか」と常に怯えている童貞は恐怖から逃避するため、歪んだ思考を生み出し、自分を守ってしまうことがあります。童貞あるいは元童貞であるすべての男子に経験があると思います。「童貞。をプロデュース」は童貞が恐怖と向き合うことで、好きな女の子に告白する勇気を獲得するまでの成長を記録した美しい映画です。


ちなみに山本浩司さんが挙げた作品は「ドリームキャッチャー」。絶対にいい人。
童貞。をプロデュース」はソフト化されていないんだが、2次会で山本さんに聞いたところによると、権利上の問題でソフト化が難しいらしい。
でもDVDで家で見るより、劇場でみんなと観た方が絶対に面白い映画。上映があったら絶対に観に行こう。


□予告



□「2001年以降、私を揺るがしたこの一本」他の候補作
ビル・コンドン「ドリーム・ガールズ」(2006)
北野武「BROTHER」(2001)
M・ナイト・シャマラン「サイン」(2002)
ニコラス・ストーラー寝取られ男のラブ♂バカンス」(2008/原題:FORGETTING SARAH MARSHALL)
井口昇片腕マシンガール」(2007)
クエンティン・タランティーノデス・プルーフ」(2007)
イーライ・ロス「ホステル2」(2007)
ロブ・ゾンビ「デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜」(2005)
アレクサンドレ・アジャ監督「ヒルズ・ハブ・アイズ」(2006)
デヴィッド・クローネンバーグイースタン・プロミス」(2007)
フェルナンド・メイレレスシティ・オブ・ゴッド」(2002)
松本人志大日本人」(2007)
ダヴィド・モロー&サヴィエ・パリュ「THEM ゼム」(2006)
ジュリアン・モーリーアレクサンドル・バスティロ屋敷女」(2007)
原恵一クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001)
原恵一クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(2002)
フアン・カルロス・フレスナディージョ「28週後...」(2007)
フランク・ダラボン「ミスト」(2007)
スティーブン・スピルバーグ宇宙戦争」(2005)
ポン・ジュノグエムル 漢江の怪物」(2006)
アルフォンソ・キュロン「トゥモロー・ワールド」(2006)
園子温愛のむきだし」(2008)
ポール・トーマス・アンダーソンゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007)
コーエン兄弟ノーカントリー」(2007)