自主でホラーを撮る覚悟

商業映画でホラーは比較的低予算で制作できます。
しかしながら自主映画でホラーを撮ることは容易ではありません。
自主映画では容易に撮れる「10代の若者の恋愛だとか自分探し」を描いた映画が多く製作されます。
僕はそれが不満でした。
「牛乳王子」はホラーの方法論で10代の葛藤を描きました。


牛乳組はスタッフ・キャスト集めから過酷でした。「ホラーなんてやりたくない。恋愛映画とか青春映画ならやりたいけど。」という脳の腐った戯言を聞かされました。


ホラーには仕掛けが必要です。東急ハンズで売られている血のりの高さに愕然とし、血飛沫を噴射する装置の造り方に頭を痛めました。恋愛映画とか青春映画なら仕掛けを用意しなくても、友だちを連れてくれば大学構内か自宅で撮れてしまいます。僕たち牛乳組は撮りやすい題材を撮りやすい手段で撮っている人間を軽蔑し、知恵を絞って、睡眠時間を削って、血糊や血飛沫噴射装置をつくりました。


撮影がはじまってしまえば、こちらのものです。噴き出す血飛沫と女子の叫び声とが僕たちを祝福してくれます。
しかし血のりがキャストの私服について怒らしてしまったり、叫び声を聞いた近隣住民に通報され警察の事情徴収を受けたりしなくてはならないので気をつけなければいけません。


また撮影後「キモい映画を撮った人」というレッテルを貼られ、さらに女子からモテなくなることは予め覚悟しておかなければいけませんでした。


それでも作品が発表できればいいのですが、数ある自主映画のコンペの多くはホラーを黙殺します。「ホラーなんて上映したくない。恋愛映画とか青春映画なら上映するけど。」という脳の腐った映画祭がこの国には多く存在しています。


運よく上映の機会を得ても安心してられません。「やだぁー。なにこれー。キモーい。ホラーなんか観たくないんですけどー。」と女性観客にディスられます。
ここまで嫌われなければならないのかと打ちのめされます。人に毛嫌いされるものをわざわざ苦労してつくっている僕たちは頭が可笑しいのだろうかと、自信が揺らいでしまうこともあります。


しかしこの国にも僅かながら存在する真っ当な映画祭は本作を評価してくれることが判りました。


今週末、沖縄映像祭さんと福井映画祭さんで「牛乳王子」を上映していただきます。
感謝しています。
ありがとうございます。