『クレイマー、クレイマー』『ライト/オフ』

ロバート・ベントン監督『クレイマー、クレイマー』(2017)

夫側に都合が良い印象。

5歳の子供の育児をする夫の大変さは描かれるが、妻が24時間目が離せない赤ちゃんの頃の育児の大変さは描かれない。

子供の対応で仕事を失い夫の苦悩は描かれるが、5年間家に閉じ込められ、仕事が出来なかった妻の苦悩は言葉で吐露されるだけ。

茶店での話し合いでは夫は声を荒げ、コップを壁に叩きつける。これはモラハラでは。

親権を得ようとする妻が敵のように描かれる。

ウーマンリブの友だちに感化された、という揶揄もある。

最後、裁判に勝ち、親権を得た妻が、親権を夫に譲る。ここがいちばん納得出来なかった。

 

デヴィッド・F・サンドバーグ監督『ライト/オフ』(2016)

暗闇だけに現われる幽霊。照明オンオフで幽霊もオンオフになる。照明のオンオフしていると、奥にいたはずの幽霊が、いつの間にか近くに移動している。このシステムは面白い。短篇ではそのアイデアがソリッドに活かされている。

長編でも、このアイデアを活用した幽霊演出は面白い。

幽霊がぬぼーっと立っているところは怖いが、ところどころ人間っぽい動きが興ざめする。例えば、ドアを閉めるとき。

長編化にあたって、キャラクターや物語を膨らませた苦心が伺える。

幽霊が闇だけに現われる理由を「光を使った治療の失敗で生まれた」という背景を設定。そこは良かった。ただ、治療の失敗前から、超常的な能力があるのが、疑問だった。

お母さんがただの狂人ではなく、幽霊に支配されている、という関係性なのが面白かった。

お母さんが自殺して終わり、という結末が辛い。可哀想すぎる。主人公のアクションで、闘いが終わらないので、消化不良感がある。

ソフトに特典として、別エンディングがある。劇場公開版のラストの続きに当たる展開である。本当の結末が、この別エンディングで、そこを切って公開した、ということだろう。僕はこの別エンディングが良かった。

主人公の前に幽霊が再び出現するが、対策を用意しており、主人公が幽霊を倒すのだ。アメリカ映画らしい決着で、こちらの方がスッキリした。お母さんが自殺までしたのに、幽霊が出現する点は気になるが、そもそも自殺じゃなくて、精神約を服用するとか、仮死状態になるって展開でも乗り切れたんじゃないか。