『タンジェリン』

ショーン・ベイカー監督『タンジェリン』(2015)

ルックは前作『チワワが見ていた』から一転、『フロリダ・プロジェクト』に近い。彩度が高い。太陽光が強く、全面的にフレアを取り入れている。全編iPhone撮影なので、色彩もフレアもフィルムとは違う。深みのあるトーンではなく、バキッとした強烈さ。

作品のテイストにマッチしている。

彼氏に浮気されたトランスジェンダーの主人公が、浮気相手を捜す。仕事場に乗り込んで、裸足のまま連れ出して、ボコボコにする。それだけではおさまらず、彼氏の前に突き出して、浮気の事実を追求する。唖然とするような行動力で、突き抜けたパワーに笑ってしまう。

全キャラクターが勢揃いするドーナツ店が白眉。

役者未経験の社会的貧困者をキャスティング。その人となりを利用した作劇や芝居。実際にユーモラスな人を選んでいるのだろう。