『セックス・エデュケーション』S3E7~E8『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』『岸辺露伴は動かない』

『セックス・エデュケーション』シーズン3第7話

校内発表で生徒たちの反逆。禁欲に対する批判と性の肯定を映像作品にして、ゲリラ上映。生徒が皆自身の性体験をプラカードに書いて掲げ、「我らはセックス学校」と高らかに歌い踊る。壁に女性器のイラストをみんなで描くのもいい。

ジャクソンはノンバイナリーのキャルとのセックスに望むが上手くいかない。多様な性を肯定しているからこそ、そのセックスの難しさもきちんと描いている。

エリックがアダムにナイジェリアでの出来事を告白する。性自認が早かったエリックはゲイカルチャーを楽しみたい。アダムは二人でゆっくりと関係を築きたい。そのズレが埋められない。

リリーが描く小説世界のアニメーションから始まる。その世界を捨ててしまったのが哀しい。

元校長が過去の自分を反省して、モーリーンと結ばれる。

オーティスとメイヴがついに結ばれる。他のキャラクターの印象が強くなった分、二人がやや薄くなった印象。

 

『セックス・エデュケーション』シーズン3第8話

ノンバイナリーの生徒がさらしを胸に撒く。さらしが擦れて、肌が爛れているショットが映る。

宇宙小説執筆を諦めていたリリーが、生徒からサインを求められて、あっさりとやる気を取り戻すのが可愛い。

エリックから別れを告げられたアダムの表情!哀しいが、良かった。

エイミーが彼氏に別れを告げる理由があまりピンとこなかった。

メイヴを留学を決める。背中を押せる人間にオーティスが成長。

 

シーズン3

すべてのキャラクターが魅力的で、その多くに掘り下げが描かれた。イケてるグループのリーダーで、いけ好かない存在だったルビーは愛すべき存在になった。アダムは登場時がいじめっ子だったとは信じられないほど、同情せざるを得ない悲哀を滲む出す。

その反面、メインであるオーティスとメイヴの存在が薄くなった印象を受けた。ついに思いが通じ合うまでに至ったが、そこまでの感動がなかった。

多様な性を描くからこそ、恋愛描写も新しい側面を見せた。エリックとアダムのすれ違い。ノンバイナリーのキャルと男性ジャクソンのセックス失敗。宇宙人セックスを求めるリリーとノーマルセックスもしたいオーラのズレ。

正しい性教育情報を伝えるスタンスも引き続き良い。

「私は膣です」や痴漢バスを超えるほどの感動エピソードはなかった。

新校長ホープが分かりやすい悪役になってしまったのも物足りなく思った。

 

ショーン・ベイカー監督『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』(2012)

ポルノ女優ジェーンが、老婆メリッサのガレージセールで魔法瓶を購入。その中に大金が入っていたことから交流が生まれる。大金を返すわけでもなく、罪悪感から送迎を申し出るというのが人間くさい。

犬に水を飲ませたときのメリッサの激昂が笑える。飲むものが変化していき、二人の関係性の変化を示す。

メリッサは近づいてくるジェーンに警戒し、催涙スプレーをお見舞いして、警察を呼ぶ。ここも笑った。

ジェーンがポルノ女優であることやメリッサが未亡人であることは序盤では言及されず、中盤で明かされる。なので邦題はネタバレになっちゃっている。原題はチワワの名前「スターレット」。

パリ旅行に参加させるために、ビンゴゲームをする。ジェーンは大金をつぎ込んで、ビンゴゲームを大量に買う。ところが、負け続けていたメリッサがその日に勝ってしまう。

ラストの墓参りで、老婆メリッサは娘を失ったことが分かる。ジェーンを娘のように思って接していたのかもしれない。

手持ちやエピソードを積み重ねていくストーリーテイリング、社会的弱者がメインキャラクターといった点は『フロリダ・プロジェクト』と共通。画面のルックは彩度が浅く、色は少ない。カラフルな『フロリダ・プロジェクト』とは大きく違う。

 

岸辺露伴は動かない』①②