『彼岸花が咲く島』『セックス・エデュケーション』S3E4~E6『死刑執行中脱獄執行中』

李琴峰『彼岸花が咲く島』

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女性が統治する社会。『猿の惑星』的な権力構造反転世界。逆説的に僕らの住む世界が男性優位主義であることを痛感する。

「ニホン語」と「女語」という特殊な言語によって、キャラクターが会話する。奇妙さはありつつも、なんとなく分かる、という絶妙なニュアンス。

隠された歴史を言葉によって受け取ることが終盤の山場となる。

特殊な言語の会話や言葉による伝承は小説だからこそ最大限に機能する設定。

ラストで主人公が過去の伝統から踏み出し、新たな社会を築いていく手段も、言葉によって伝えること。若い世代が語るべき言葉を自分たちの意思で選択。じんわりと感動した。

 

『セックス・エデュケーション』シーズン3第4話

「愛している」を返してくれなかったため、ルビーはオーティスと距離を置く。最終的にオーティスは「愛している」とは言えないとはっきり伝える。傷ついたルビーは友達を呼び出す。悲しげなルビーのバックショット。やってきた二人の友達が両サイドに座り、肩を抱く。イケてるグループの3人は、鼻持ちならない存在として描かれてきたが、ここでは彼らの絆を描いたショットが良かった。

新校長の支配が強まる。

性教育が男女別に分けられ、ノンバイナリーのキャルは戸惑う。女子生徒だけに避妊のリスクを伝える不均衡。メッセージには「禁欲」「同性愛嫌悪」が含まれている。オーティスとメイヴが反発して抜け出す。セックスセラピー復活へのきっかけになりそうだが、オーティスは拒む。

教師のアドバイスで、性に悩む二人はクリニックで診察を受ける。「コンドームを拒む彼氏に避妊を薦める」「原因不明の顔の腫れがコンドームによるアレルギーだと判明する」といったサブプロットは、性教育と繋がっている。作品を通して、性に関する正しいを伝えるスタンスもいい。

メイヴとアイザックが結ばれる。身体障害者のあるアイザックとのセックスが繊細に描かれる。

 

『セックス・エデュケーション』シーズン3第5話

フランスに校外学習へ出かける。

オーティスがルビーとの和解を求めるが、自己愛が強すぎて、確かにキモい。

ウンコ事件が発生し、アダムとエリックの元彼が和解。「それは私の膣」エピソードのセリフパロディで、「それは私のウンコ」。

オーティスとメイヴが取り残され、ツーショットになる。留守電に込めたメッセージをオーティスが伝え、二人はキスをしまう。

新校長ホープ体外受精にトライしているが、うまくいっていないことが分かる。ここまで悪役として描かれていたが、彼女の苦悩も描かれていくのだろう。

ホープジーンと対面させ、性教育の方針で対立。

高齢出産をするジーンが、差別的な医者から「高齢出産をするデメリットを考えなかった」と問われ、「クソ男が親であるデメリットは考えなかったのか?」と返すところ、痛快。

 

『セックス・エデュケーション』シーズン3第6話

性被害を受けたエイミーは自分が加害者に微笑んだせいかもしれないと漏らす。ジーンが「あなたには一つも落ち度なんかない」と助言する。正しいメッセージをきちんと伝えるところがこのドラマの美点。

新校長ホープが問題児3人アダム・キャル・リリーを壇上に上げて、問題行動が書かれたプラカードを首からぶら下げる。ホープがシーズン3に悪役だが、ちょっとやり過ぎな印象もある。分かりやすい悪になってしまっている。

男らしさを競うオーティスとアイザック。コミカルな対決があるので、アイザックが可哀想に見えてしまう危険を回避している。

元校長がセラピーを受けて、男らしさに囚われていたことを明かす。有害な男らしさの解体もテーマの一つ。

エリックはゲイクラブに参加して、はっちゃける。アダムはエリックのために詩を書こうとするが、うまくいかない。アダムの健気さが切ない。

 

荒木飛呂彦『死刑執行中脱獄執行中』

『死刑執行中脱獄執行中』舞台化されたことも納得できる設定。エンタメ性は高い。

『ドルチ』舞台や登場人物を限定する発想は、低予算ワンシチュエーションスリラー映画の発想ともリンクする。

『岸部露伴は動かないエピソード16』連載時に読んでた。「ポップコーンを投げて食べる」という日常的なアクションをサスペンスフルに描くのが素晴らしい。「幸せの絶頂の時に殺す」という発想は、『デッドマンズQ』と同じ。

デッドマンズQ

吉良吉影は大好きなキャラクターなので、まさか後日譚があったとは。

ルール設定が厳格なので、そのトライ&エラーが面白い。吸血鬼のような入室のルールで、人間とぶつかったり、犬にかまれると、体の部位がとれてしまい、Jホラーとは大きく異なる概念の幽霊であること面白い。壁をすり抜ける描写にもフェティシズムがあり、幽霊といっても異質な質感がある。

家自体が幽霊の「屋敷幽霊」という設定もユニーク。