『白い恐怖』『狩人の夜』

アルフレッド・ヒッチコック監督『白い恐怖』(1945)

新しい医院が実は偽物で、本物は殺されていた。そして主人公は偽物に恋をしてしまった。という導入部分が魅惑的。

心理分析に描写は現代の観点では弱く感じる。

ただサルバドール・ダリが協力した美術は圧巻。

ジョンが逮捕された後、有罪判決されるまでの展開を、主人公のムケの絵だけで表していく。簡略化。

ブルロフ博士につけてパンすると、カメラ手前にジョンがもつカミソリがフレームインするショット。牛乳をコップで飲む際の「口」視点のショット。拳銃ごしで去って行く主人公を追い、立ち去った後銃口がカメラに向くショット。

 

チャールズ・ロートン監督『狩人の夜』(1955)

伝道師を偽り、性的不能者の殺人鬼。大金を手に入れるために、結婚までする。両手にそれぞれ「LOVE」と「HATE」のタトゥー。

美しくてうっとりする。絵本のような構図。例えば、船で逃走する場面では画面手前にウサギを配置したり、空に星や月を配置したりする際。立体的ではなく平面的。絵で描いたような配置にしている。露で濡れた蜘蛛の巣やゾウガメのモンタージュ

絵本のページをめくっている感覚で、カットが切り替わる。例えば、老婆が子供たちを連れて逃げる場面では、全身が映る横トラックの同アングルのカットが続く。大抵はアングルを変えたカットを繋ぐが、あえて同アングルにしている。

陰影が際立つモノクローム

ショットガンを撃たれると、突然子供のように叫び、逃げ出す。撃退したが、痛がっている姿が怖い。

母が殺されたことを知ったとき、「お金なんてくれてやる」と叫びながら、金が入ったぬいぐるみを殺人鬼にたたきつける。悲しみの表出として見事。