デスティン・ダニエル・クレットン監督『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)ドルビーアトモス
カンフー映画にある男性性の有害を解体しようとしているのが良かった。
父は闘わなかった息子を許せず、強くなることを求める。強くなることを求める娘は拒む。そして囚われの女性を解放するために闘わなければいけないと思い込んでいる。
碇ゲンドウ感がある。
そんな父から離れ、息子は闘うことを封じ、娘は闘いをエンタメ化した商売をしている。
アクションは優美さを重視。チャン・イーモウ『HERO』に比べると優美さに物足りなさを感じた。
電車でのアクションや格闘技場ビルでのアクションの方が好み。
予告を観たときは主役に魅力を感じなかったが、本編を観ると好感が持てた。
オークワフィナは相変わらず最高。ただの賑やかしではないかと心配していたが、ちゃんと活躍の場があって良かった。
主人公とオークワフィナのロマンスが具体的に発展しないのも、すごくしっくりきた。ベタベタしたロマンスはなくていいよね、ってスタンス。
トニー・レオンは色気たっぷり。ヴィランに奥行きを与えている。
回想が多すぎるような気はした。また始まった、という印象。
テイラー・シェリダン監督『モンタナの目撃者』(2021)
主役の女性が、子供と逃避行をしても、母性を強調しないのが良かった。職業上の立場から子供と接している。ラストも養子にしますってことになるかと思いきや、「一緒に考えましょう」と距離を保った接し方。
妊婦が能動的に闘うのは新鮮。アクション映画における妊婦は「守れるもの」として描かれることが殆ど。本作では銃を手に馬に乗って、夫の救出に向かう。そして強い。強すぎて、嬉しくなった。
殺し屋が経費削減で最少人数で仕事をやらされているのが面白い。作戦が失敗したあと、クライアントの文句を言う。
こちらの回想は端的でよかった。フラッシュバックくらいの短さだが、彼女が風を読み間違えて大惨事になったこと・子供が救えなかったことは十分伝わる。
序盤でやる危険なパラグライダーが、てっきり終盤で脱出の手立てになるかと思ったが、そんなことはなかった。
内山雄人監督『パンケーキを毒味する』(2021)
リアルタイムの政治ドキュメンタリーは日本ではなかなかつくられないので、嬉しい。
海外のドキュメンタリーと比べると、語り口が鈍い印象。もっと情報量が欲しいし、もっと毒気のある遊びが欲しい、もっとユニークな編集が欲しい。
ナタリー・エリカ・ジェームズ監督『レリックー遺物ー』(2020)
こけおどし的な演出に頼らず、静けさを際立たせ、緊迫感を醸成する。
画面奥に浮かぶ黒い影。それがなんであるか明確には語らない。説明しすぎず、余白を残した物語。
認知症の介護の生々しいディティ-ルが現実と地続きであることを喚起させる。
自傷していたのではなく、別のものに変貌しようとしていた。という設定は老化の比喩として分かりやすいが、刺さる。クローネンバーグ『ザ・フライ』のように、変貌が本人よって結果的に心地よく見えるのもグロテスクさを湛えている。
『ホワット・イフ...?』第5話
ヒーローがゾンビ化する設定は面白かった。
リアル方向の絵柄だが、しゃべる場面になると生きている感が弱く、物足りなく感じた。
毎話絵柄が変わってもいいきがしてきた。