『すべてが変わった日』『プロミシング・ヤング・ウーマン』『ドント・ブリーズ2』『ホワット・イフ...?』E4

トーマス・ベズーチャ監督『すべてが変わった日』(2020)

抑制の効いたタッチで描かれる老夫婦の西部劇。久しくこういった映画が作られなかったように思う。

マーガレットが息子の妻ローナの育児に口を出してしまう。その瞬間のローナが抑圧を感じていることが分かる。だから息子の死後に、ローナは再婚して、離れてしまったのだろうと推測できる。マーガレットからローナへの謝罪と、和解がきちんと描かれているので、ほっとした。

活劇場面の演出も惹かれた。

階段の上下関係を使った子供の受け渡し。

撃たれた人物が倒れた拍子に背後のドアが開き、燃え盛る炎が見える。

 

エメラルド・フェネル監督『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)

ポップで痛快な復讐劇かと思いきや、そうではない。そういった消費の仕方はしないのだ、という強い意志を感じる。

被害者の当時の姿は見せず、被害の映像も見せない。これもまた扇情的な消費を否定する意志なのだろう。

どう転がっていくか分からないスリリングさがありつつ、綺麗に着地する。

女性差別なんてしていない」と自認しているような男性にある無自覚な暴力性を炙り出していく。

パリス・ヒルトンブリトニー・スピアーズの選曲も、遊びではない。そこが格好いい。

 

ロド・サヤゲス監督『ドント・ブリーズ2』(2021)

スピーディな展開で、99分というランニングタイム。ジャンル映画としてのフォーマットとして正しい。

見せ方の工夫も練られている。少女が侵入者から隠れて、次々と場所を移動していく過程をワンカット長回しで映す。

主人公の老人が盲目であるが故のサスペンスやアクションもアイディアが豊富だ。特に水面の波紋による位置把握は良かった。ただ、今回は派手なスペクタクルが起きてしまうため、盲目だからこそのサスペンスが減退した印象もある。前回の敵は小悪党だったが、今回は熟練の犯罪者集団である。強すぎて、前作のリアリティは薄まった。

最大の変化は盲目の老人のヒーロー化。『ターミネータ2』方式なんだろうが、ここがノレなかった。前作で性犯罪を犯しているので、ヒーローとは受け入れがたい。

 

『ホワット・イフ...?』第4話

ドクターストレンジが亡くなった恋人を蘇らせるために一線を越える人格を生み出し、結果的に宇宙が破滅する。

1話限りなので、宇宙規模のバッドエンドまで描ける。主人公が選択を誤り、破滅してしまうヒーロー映画も観てみたい。