近藤史恵『夜の向こうの蛹たち』
主人公の前に自分を偽る女性と寄生する女性が現われる。
主人公はその行為に疑問を抱くものの、彼女らがそうせざるを得ない悲哀を理解していく。
終盤では二人の成長が描かれ、胸に迫った。
無自覚な差別発言をする人間に主人公が「死ね」と毒づく描写に笑った。
ティム・バートン監督『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(2016)
能力者たちが多数登場するので、消化不良感がある。『ファースト・ジェネレーション』はその辺りのバランスが上手かった。本作も同じ脚本家だが。
『セックス・エデュケーション』の少年が主人公。
エラ・パーネルはバートン映画らしいヒロイン顔。
近年のバートン映画は切実感が薄い印象。「いかにもバートンらしい」を自己再生産。
サーカス小屋でゾウの巨大人形が動き出すのは、次作『ダンボ』を予告か?
夫が不倫を告白する場面で停電を起こす。暗闇に包まれた中、蝋燭が顔を照らすシチュエーションを用意する。
殺人を告白する場面では、暗いトンネルが舞台となる。画面奥から迫るトラックのライトが不穏さを醸し出す。
殺人を友人や妻に告白したあと、主人公は妙にすっきりしてしまう。視線を逸らし続け、暗い顔をしていた彼は、表情を明るくする。罪を認めたというより、自分だけで重荷を背負うのが辛いから、妻や友人にも背負わせた、という印象。さらに逆に「どうすればいいんだ?」と問う。そこが自分勝手で、自己憐憫にも感じられ、気持ち悪くて、面白かった。人間の心理として、そういうものかもしれないと、妙な納得感。
中盤の「お前(妻)に殺されるなら本望だ」という台詞が結末を予告する。
終盤に、決断をした新珠三千代の表情にぞくぞくした。その後モノローグで、内面や行動を説明するが、それがなくても十分に伝わる表情だった。