『追跡』

ブレイク・エドワーズ『追跡』(1962)

女性銀行員が正体不明の犯人に銀行から10万ドル盗み出すよう脅される。

緊迫した画面設計が素晴らしい。影に包まれた犯人と光に照らされる怯えた眼。大量のマネキンの中に犯人が潜む禍々しさ。銀行から10万ドルを盗み出すときの、「あれ?見られた?気づかれた?」という不安感の醸成。『ティファニーで朝食を』の監督が、こんな秀逸なサスペンスを撮っていたなんて、知らなかった!

黒沢清監督の好きな作品らしい。確かに画面上部からぬっと出た手(マネキン)、銃撃の間合いは特に黒沢映画っぽさを感じた。

ガレージからはじまって、最終舞台は野球スタジアムとなる。小さなスケールの話かと思ったら、思いもよらぬスケールに展開。

第2次大戦中にFBI捜査官だった脚本家によるリアリスティックな捜査描写。

不気味な犯人の犯行動機が難病の子どもを救うためではないかって推測されるが、全然そんないい人には見えず、また自分からは犯行動機を明示せず、不気味なままマウンドで死ぬ。この突き放した居心地さがいい。

最後に犯人を演じたロス・マーティンのクレジットだけが現れ、ENDマークとなる。カッコイイ。